大学受験における個別指導の決定的なデメリット

現在人気の個別指導の落とし穴

最近の学習塾の業界では、個別指導が人気になっています。僕が子供のころは「塾=先生が教室で授業をする」というのが一般的でした。

しかし、平成の中頃から「個別指導塾」というのが増えてきて、今では43.7%が個別指導塾に通った経験があるという調査結果もあります。(出典:個別指導検索コエテコ

今回は、大学受験を10年間以上担当してきた私が、個別指導のデメリットについてご紹介いたします。

あくまで大学受験指導における個別指導について、教えている立場から知って欲しいことになります。
小学生、中学生などについては事情が異なると思います。

大学受験の個別指導には大きな落とし穴があった

実は2種類ある個別指導

一口に個別指導といっても一般的には2種類の個別指導があります。

まず一つ目は、「先生1人に対して、1〜3人前後の生徒を指導する」といった形式です。多くの方々はこちらを想像すると思います。

しかし、実は個別指導にはもう1種類あります。「先生1人に対して、何十人もの生徒を同時に指導する」といった形式です。

教えない個別指導

え?それは集団指導じゃないの?と思われるでしょう。
しかし、その何十人もが同じことをやるのでなく、それぞれ個別のことをやっているので個別指導と言っています。具体的には武田塾などがそれにあたります。

こちらにおける「指導」とは、ペースコントロール、小テストなどの実施に限定されており、なぜそうなっているのか考えるのは高校生自身です。

ちなみに、この形式は全くダメではありません。

特に学力の高い子、自分の勉強にこだわりがある子に関しては、この教えない個別指導はいいものです。高校生用の問題集は数多く存在し、わかりやすく解説された参考書も多く出版されています。実際に私自身も、いくつかの教科はすべて独学+友達との議論で学びました。

受験が終わった後の学ぶ力を育てるという点では、理にかなった指導になります。

個別指導の落とし穴とは?

さて、本題の個別指導の落とし穴ですが、実はみなさんが想像している「従来の個別指導」で起こっています!

大学生による指導で質が低い。といったことは一般的に知られていますが、それ以上に重大な落とし穴があります!

授業の時間数が少なすぎる

やる気のないアルバイト講師を弁護するつもりはありませんが、実際にやる気のある講師、プロ講師の中でもこの問題は頻繁に議論されていることです。

授業の時間数が少なすぎて困惑する現場

どんなプロ講師が指導してもこの問題が立ちはだかります。
せっかく高額なプロにお願いしたのに成績があがらない!という意見がネットにありますが、それはこの時間数の少なさが大きな原因です。

たとえば学校において、数学は週5時間程度あります。一方で、学習塾に与えられる時間は1〜2時間です。個別指導になると授業料が高額になるため、「1教科=1コマ」という制限がかけられる場合がほとんどです。

そもそも、1コマですべての内容を教えきることは不可能です!一部を教えて、あとは自分で勉強をしてくれ!というしかありません。特に教室長がこの点に気付いていない場合は、アルバイト講師としては最悪です。

特に学校の授業に置いていかれている子は、こんな時間数では授業だけでは追いつくことは不可能です。私は、個別指導で高校生をお預かりする際には、「1教科=2コマ」だと思ってくださいとお話します。(たまに1教科=1コマでも可能ですが、それは以下で紹介することができている子のみです)

その子自身の自習する力に頼りきる

以上のように圧倒的に足りない時間数で、更なる試練が高校生・指導する講師に襲いかかります。
まずは、僕の体験談からご紹介します。

<現場で起こっていること>(体験談)

お恥ずかしながら、大学生で塾のアルバイトを始めたての頃の体験談です。
実際に僕自身の技量が足りなかった部分もありますが、実際に現場で起こっていることです。

週1回の数学の個別指導、授業中にはしっかりと解説をして高校生自身も満足度は高い状態でした。
(当たり前です、わかりやすく解説するのが僕らの仕事の一つです)

しかし、それは僕の頭で理解していることであり、本人が解けるようになったかは別問題です。
宿題で同じような問題を指定してやってきてもらいました。
そのうえで、翌週、小テストを行いました。授業や宿題でやったことの少し数字を変えた問題です。

ここでビックリ!生徒の手が全く動かなかったのです。
聞いてみたところ、宿題はその日にやったからできた。でも、もう記憶にない!

さて、これはなぜ起こってしまったのでしょうか?

それは、自習する力の大切さが認識できていなかったからです。高校生自身が、自分の理解度を把握し、適時復習を行っていく力が大切になります。

私たち指導者としても、この点を十分に高校生と話し合い、重要性を理解してもらう必要があります。
教科の指導ができるのは当たり前。その上で、高校生が一人で勉強をしているときに伸びる姿勢を一緒に作るかが技量の差であることを、このときは理解できていませんでした。

個別指導が向いている子とは?

本当に個別指導が向いている子とは

個別指導に向いている子は、自分で学習を進めることができていて、その中で個別の疑問に答えて欲しい子です。

1教科=1コマという制限の中で、成績を上げていくためには必須の要素です。どうしても足りない時間数なので、基本的には自分で進めていく力が必要になります。これができている子は、個別指導が一番合っていると思います。

それでも個別指導がいいとき

しかし、そういった力を持っている子は限られています。それでも個別指導がいいな!と思った時には「1教科=2コマ」を基本にしてください。

自分で自習ができるレベルになれば、1コマに減らすこともできますが、最初の頃はこれが必須です。費用的に厳しいのであれば、個別指導という部分を妥協した方がいいと思います。1教科=1コマでは、効果が相当小さくなってしまいますので、そうしてまで塾に通う必要はありません。

費用的に厳しいからこそ、少人数指導や集団指導などで基礎をしっかりと入れてから、個別指導に移行することをお勧めします。実は、多くの少人数指導は10名以下なので、個別指導とそこまでの差はないことがほとんどです。むしろ、同じ金額で時間数が稼げる分、費用は同じで効果を何倍にもなるものです。

最後に

大学入試は、一昔前に比べて遥かに難しくなっています。
昭和のころは暗記に偏っていたようですが、近年では暗記を前提とした考える力を聞く問題が多くなっています。

決して安くない学習塾です。
本当に個別指導がいいのか?というのを考え直してもらいたいと思います。